恋を知らないきみへ

最初は、私たちが作ったものを審査される場所だと思っていた。

否定されるかもしれない。
また一から作り直しになるかもしれない。

そんな不安を抱えて座っていた。

でも、今は違う。


設計の質問によって、曖昧だった基準が見えてくる。
広報の指摘によって、誰にどう伝えるかが具体的になる。
商品企画の視点が入ることで、初めて現実的な商品としての形を持ち始める。

私たちの作ったものが壊されているんじゃない。
広げてもらっているんだ。

ふと隣を見る。

木ノ下くんも、さっきまでとは違う表情で資料を見ていた。


真剣ではあるけれど、どこか楽しそうだった。

私たち二人だけで抱えていたものが、今、たくさんの人の手へ渡っていく。

少し寂しいような、不思議な感覚もある。けれど、それ以上に嬉しかった。


「ほかにありますか?」

営業部長が問いかけると、設計部の若い男性社員が遠慮がちに手を上げた。

「細かいことなんですけど」

「どうぞ」

「小関さんと木ノ下くんって、同期なんですか?」

思いもしなかった質問に、私は戸惑って目を瞬かせた。

「あ、はい。同期です」

「ああ、やはりそうでしたか。お互いの説明を補うのが自然だから、ずっと一緒に仕事してきたのかと思いました」

「いえ、今回が初めてです」

私が答えると、相手は驚いたように目を見開いた。

「え?初めてで、あれだけ息が合うものなんですか?」

「違います。息が合うというか……」


言いかけて返答に困って、つい隣を見る。
木ノ下くんも、同じようにこちらを見ていた。

「散々ぶつかった結果です」


彼が平然と答えると、再び会議室に笑いが起きた。
けれど、私はなぜかその言葉が嫌ではなかった。