恋を知らないきみへ

週末になるとほとんど必ず、彼の部屋へ私が泊まりに行く。
それはもうずっと続いている、ルーティンみたいな。


彼の部屋でテレビを見ながら、私は彼の肩に寄りかかっていた。

安心感、幸せ、隣にいてほしい、触りたい、
今の私には、どれも当てはまらない。

でも、毎週こうして一緒にいる。


「……ほのか」

「ん?」

「髪、切らないでね」

不意に言われたそれに、思わず吹き出す。

手に持っていたチューハイの缶を口に運んで、「はいはい」と受け流した。

「切らないよ。何が気に入らないのか知らないけど」

「こうして触れないから」

そう言って頭の上から毛先まで撫でられて、ああそうか、とぼんやり思う。

侑樹さんがよくやるこの仕草は、私を愛しく思ってくれているサインなんだ、とようやく気づいた。

長く付き合っていても、分からないこともあったりするんだな。


そうしているうちに手が頬に添えられて、そっと唇が重ねられた。

「俺のこと、好き?」

キスの合間に尋ねられて、小さくうなずく。

───たまに聞いてくるこの確認みたいな質問は、なんなんだろう?

「うん。ちゃんと好き」


答えても答えても、彼はまた同じことを聞いてくるんだろうな。
不安にさせるようなことはなにひとつしてないんだけど。

でも、聞かれたら都度答えればいい。

“ちゃんと好き”と。


『俺、たぶんきみのこと、嫌いだと思う』


こんな時に頭によぎったのは、まさかの言葉だった。

息が止まったような感覚になって、とっさに顔を離してしまった。


「……ほのか?」

「あ……、ごめん」

わけが分からないまま謝って、ごまかすように侑樹さんに抱きついた。

背中を優しくぽんぽんと触られて、それでもどこか意識が違うところに飛んでいる自分に戸惑う。


───信じられない。なんで、今なの。

ぎゅっと唇を噛みしめた。