恋を知らないきみへ

翌日の午後、十四時。

指定された大会議室へ足を踏み入れた瞬間、昨日までの打ち合わせとは空気がまるで違うことに気づいた。

長いテーブルを囲むように、すでに何人もの社員が席についている。

営業部とマーケティング部だけじゃない。
設計部、商品企画部、広報部から、それぞれ責任者や担当者が集められていた。


前方には大型モニターがあり、そこには昨日まで私と木ノ下くんが何度も修正を重ねてきた資料の表紙が映し出されている。

私たち二人だけで向き合っていた小会議室とは、規模も緊張感もまったく違った。


「小関さん、こっち」

先に来ていた木ノ下くんに小声で呼ばれ、空いている席へ向かう。


彼の隣に腰を下ろして資料を取り出しながら、会議室を改めて見渡した。

……人、多いな。

昨日、部長から“ここからは二人だけじゃなくなる”と言われた。

頭では分かっていたつもりだったけれど、こうして実際に並んでいる顔ぶれを見ると、その言葉の意味が急に現実味を帯びてくる。


私たちが考えたものを、これだけの人たちが見る。

そして今日からは、それぞれの部署がこのブランドを扱うことになる。

急に怖くなってきて、そっと息を吐いた。

すると隣から、木ノ下くんがこちらをちらっと見やる。