恋を知らないきみへ

暑いって言ってるのに、指を絡めてくる。

なんとなく彼を見上げると、侑樹さんはとびきり優しい笑顔で私を見ていた。
その笑顔は甘くて、愛しくて、きっと愛で溢れてる。


「週末だから疲れてる?」

こうして気遣ってくれるのも、いつものこと。

「……そうかも」

「明日、気分転換に映画でも観に行く?」

「暑いから家で海外ドラマ見よ」

「出不精だなー」


なんでもない会話を交わしながら、駅へと向かう。

繋がれている手を見下ろして、さっきの颯爽と歩いていた女性を思い出してぽろっとつぶやいた。

「……髪、切ろうかな」

「えっ、どのくらい?」

思いのほか、侑樹さんの反応が強かったから驚く。

「俺、ほのかのロング好きなんだけどな」

「思い切って染めて、パツっとボブにしようかなって」

「もったいない!」

「そう?似合ってなかったら、また伸ばすし」


侑樹さんとは数年前に一緒に仕事をしたのをきっかけに付き合い始めた。

そこから一年以上、彼からのアプローチが続いて。
他にも取引先の人や社内の人から、好きだと言われたこともあった。

でも、全部ピンと来なくて。

一番、自分が自然でいられるような気がした侑樹さんと付き合い始めた。


これといった喧嘩は一切したことがない。
その緩さが私にはちょうどよかった。