文句を言いながらもシュークリームの袋に手をかけた木ノ下くんに、私は気になっていたことをたまらず尋ねた。
「……木ノ下くんって、唐揚げ好きなの?」
「───唐揚げが嫌いなやつっているの?」
不思議そうに首をかしげる仕草をされて、質問し直す。
「お母さんの唐揚げ、好きなの?」
「好きだよ」
その答え方があまりにも素直で。
ふわりと笑みが浮かんだ。
「……可愛いとこあるね」
「は?」
彼は本気で意味が分からない、とばかりに困ったように顔をしかめるのだった。
「どこが?」
言い返されたあたりで、お昼休みが終わる時刻を知らせる音楽が流れた。
「……あ、もう時間」
私のつぶやきとともに、それぞれ腕時計で確認する。
木ノ下くんはシュークリームを口の中に詰め込んでいた。
「なんか雑談って感じであんまり進まなかったね」
机に広げていたメモや書類を片付けていると、「いや」と木ノ下くんが首を振るのが見えた。
「ちゃんと進んでるよ。答えはまだ出てないけど」
「……そう?」
「少なくとも先週より近づいた」
彼はまだシュークリームをもぐもぐしながら、手早く自分のものを回収すると立ち上がった。
「締切には間に合う気がしてきた。じゃ、また夕方」
「うん。またあとでね」
木ノ下くんは自分の荷物を抱えると、いつもの歩幅で部屋を出ていく。
私はまだ飲み終わっていない野菜ジュースを飲みながら、イスにもたれてメモを眺める。
「“時間じゃなく、気持ち”。“余裕”……。“暮らしが自然に回ってる”、か……」
私はメモを閉じる。
まだ答えは出ていない。でも、不思議と焦りはなかった。
『また夕方』に向けて、ゆっくり立ち上がった。
あとは、もう少しだけ───。
••┈┈┈┈••
「……木ノ下くんって、唐揚げ好きなの?」
「───唐揚げが嫌いなやつっているの?」
不思議そうに首をかしげる仕草をされて、質問し直す。
「お母さんの唐揚げ、好きなの?」
「好きだよ」
その答え方があまりにも素直で。
ふわりと笑みが浮かんだ。
「……可愛いとこあるね」
「は?」
彼は本気で意味が分からない、とばかりに困ったように顔をしかめるのだった。
「どこが?」
言い返されたあたりで、お昼休みが終わる時刻を知らせる音楽が流れた。
「……あ、もう時間」
私のつぶやきとともに、それぞれ腕時計で確認する。
木ノ下くんはシュークリームを口の中に詰め込んでいた。
「なんか雑談って感じであんまり進まなかったね」
机に広げていたメモや書類を片付けていると、「いや」と木ノ下くんが首を振るのが見えた。
「ちゃんと進んでるよ。答えはまだ出てないけど」
「……そう?」
「少なくとも先週より近づいた」
彼はまだシュークリームをもぐもぐしながら、手早く自分のものを回収すると立ち上がった。
「締切には間に合う気がしてきた。じゃ、また夕方」
「うん。またあとでね」
木ノ下くんは自分の荷物を抱えると、いつもの歩幅で部屋を出ていく。
私はまだ飲み終わっていない野菜ジュースを飲みながら、イスにもたれてメモを眺める。
「“時間じゃなく、気持ち”。“余裕”……。“暮らしが自然に回ってる”、か……」
私はメモを閉じる。
まだ答えは出ていない。でも、不思議と焦りはなかった。
『また夕方』に向けて、ゆっくり立ち上がった。
あとは、もう少しだけ───。
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