恋を知らないきみへ

私も私で、さっきコンビニで買ったおにぎりと野菜ジュースを机に並べる。

「土日さ、色々考えてみたんだよね」

私はおにぎりのフィルムを剥がしながら続けた。

「コンセプトってインパクトも大事な気がして。今回のブランドって、あんまり強すぎるコンセプトは合わない気がしない?若年層向けだし、リアルに寄せた方がよくない?」


木ノ下くんは「うん」と短く返事をしながら冷やし中華を口へ運ぶ。

その時だった。
ふいに私の昼食へ視線が落ちて、動きが止まる。

「……」

口にはまだ麺。
そのまま数秒固まってから、慌てて飲み込んだ。

「……ごめん。話の途中なんだけど。……小関さん、それしか食べないの?」

「───え?」

「おにぎり一個とジュースだけ?」

「いつもこれくらいだよ?」

「……マジでそれしか食べないの?」

「満腹にすると午後眠くなっちゃって。運転もあるし、このくらいがちょうどいいの」


居眠り運転防止なんだよね、と付け加えたのに、木ノ下くんは一切聞いていない顔をしていた。

そして腕の中に隠していたシュークリームをちらっと見せてきた。

「……いる?」

彼らしくない提案に、吹き出してしまった。

「あはは、大丈夫!ありがと」

「俺なら夕方まで持たないな」

「小腹が空いたらちゃんとなんか食べるよ」

「……ならいいけど」

そう言いながらも、納得していない顔で冷やし中華をすすっている。