恋を知らないきみへ

二人で言い合っていたら、どこからともなく「お疲れ様でーす」と声が飛んできた。

若い男性社員二人。こちらに手を振っている。
片手には食事終わりの空になったお皿が乗ったトレイを持っていた。

私は知らない顔なので木ノ下くんに視線を送ると、彼が一瞬嫌そうな表情を浮かべたのは見えた。
……が、それもすぐに消えて無に変わった。


「お疲れ様」

と素っ気ない返事だけして、それだけ。

知り合いじゃないの?と聞こうとしたら、あちらから話しかけられる。

「木ノ下いいなあ、営業で有名な小関さんと仕事できて」

「……べつに」

私にではなく、木ノ下くんにだけ声をかけていた。
彼はとてつもなく不機嫌そうなものへと、声色が変わる。

「いま打ち合わせ中だから」

「はいはい。お邪魔しました」


彼らが去っていったあと、私は空気の流れが分からずなんとなく尋ねる。

「……マーケの人?」

「あいつらも同期だよ。覚えてないの?」

「仕事で関わらなきゃ分かんないよ」

「じゃあ気にしないで」


木ノ下くんは相変わらずの口調でそう言って、切り替えるみたいにパソコンの画面のひとつを見つめた。

「……さっきの。一番刺さったやつ」

「うん。なにかある?」

「強いて言うなら──“洗濯が一階で終わる”かな」

彼が見つけたそれは、偶然かもしれないけれど私にも刺さっていたものだった。

「これは、俺の中からは絶対出てこない。小関さんが展示場のお客様から引き出した、けっこう貴重な意見だと思った」

「木ノ下くん!」