触れられなくても、君がいい。


「そういや、下でママが呼んでたぞ」

「なんて?」

「『朝顔に水やった?』だって」

「……やばっ!」

 ビー玉のような瞳を丸くしたあと、パタパタと慌ただしい足音を立てて部屋を飛び出していった。


 一人になった部屋。
 開け放たれた窓からは、けたたましい蝉の声が流れ込んでくる。

「…………」

 仕舞ったばかりの缶ケースを、引き寄せた。

 蓋を開け、一番上にあった封筒を手に取る。
 淡いピンクとイエローの花が散りばめられた便箋を、そっと開いた。

 インクの褪せた丸い文字と、ほんのり香る古い紙の匂い。



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 航、大好きだよ。

 近くにいられなくても、私はやっぱり、航がいい。


 夏帆(かほ)

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