触れられなくても、君がいい。

 ◇

 二十分後、足早に自室へ向かうと、中から煌々と明かりが漏れていた。
 勢いよくドアを開ける。

 そこにあったのは――本棚から勝手に取り出した漫画を読みながら、図々しくも俺のベッドに寝転がる悠也の姿。

「よー。お疲れ」

「何寛いでんだよ」

 呆れて息を吐きながら、部屋に入る。

「まあまあ。俺らの仲じゃん」

 家も近く、親同士が知り合いなこともあり、物心つく前から付き合いがある。
 いわゆる腐れ縁というやつだ。

「ていうか、約束なんてしてねーだろ」

「いやいや、しただろ。これ持ってくるってさ」

 悪びれもせず起き上がった悠也は、傍らに置いていた紙袋を持ち上げた。


「ほら、結婚記念日の祝い酒!」


「…………」

 たしかにいつか渡すとは言われていた気がするが、今日だとは話していない。
 世間ではそれを『約束』とは呼ばない。

 とはいえ、せっかくの好意を無下にするわけにもいかず、差し出されるがままに受け取った。

「……どうも」