触れられなくても、君がいい。


「……付き合わないよ」

 はっきりと、静かな声で答える。

「あっそ」

 小宮山は、あっさりと踵を返した。

 さっきのが冗談だったのか、本気だったのかは、わからない。

「早く授業行こーぜ。失恋してサボるとか、ダサいし」

 照れ隠しのように乱暴な口調で言い捨てると、彼は遊歩道の上に戻り、再び塾に向かって歩き始めた。

 その背中に続きながら、唇を噛み締めた。

 彼の言う通り、こんなことで立ち止まるなんて、たしかに格好悪い。
 実らなかった片思いなんて、きっと五万とあることだし、時間が癒やしてくれる。
 そんなこと、頭ではわかっている。

 わかっているのに。

 どうしてこの胸は、息ができないほど、痛んでしまうんだろう。