触れられなくても、君がいい。


「……っ」

 心臓が一度、痛いほどに跳ねたあと、みるみる早鐘を打っていく。

 躊躇いながら、手に取った。

 いつもなら、部屋でハサミを使って丁寧に開けるのに。
 その場で、震える指先で、少しずつ糊を剥がしていった。

 微かな音が、私しかいないエントランスに響く。

 折りたたまれた便箋を取り出す。
 まともに直視できず、薄目になりながら、カサッと開いた。


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 夏帆へ

 ごめん。
 俺は、好きとかよくわからない。

 でも、ありがとう。

 航

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 止まっていた息が、唇の隙間から、ゆっくりと漏れ出ていった。