触れられなくても、君がいい。

 ◇

 冷たい雨は、夜になっても降り続いていた。
 傘を叩く雨音を聞きながら、重い足取りで家路についていた。

 鞄の中には、先ほど塾で返却されたばかりの春期模試の結果が押し込まれている。
 一年生の総復習として受けたテスト。結果はあまりいいものではなかった。

 両親の勧めで、中学生になると同時に入塾した。
 まだ明確な志望校があるわけではないけれど、今の自分を数字で評価されているようで、妙なプレッシャーを感じてしまう。

 こういうぼんやりと曇る気持ちを、いまだに家族には上手に吐き出せない。

 水たまりを避けながら歩いていると、ふと、彼氏ができた友達のことを思い出した。


 もしも――航と『恋人』になれたら。

 勉強や部活のことで落ち込む日があっても、「お互い頑張ろうね」って、励まし合えるのに。
 それだけで、こんなふうに灰色に染められた心も、きっとすぐに晴れ渡っていくのに。


 そんな願いが、冷え切った身体に、じわりと広がっていく。