触れられなくても、君がいい。


「いやあ……全然脈ナシだし……」

 苦笑いしながら、頬を指で掻く。

「半年も文通続いてるのに?」

 実際のところは、文通を続けたい私が必死にひねり出す話題に、航が応えてくれているだけの気もする。
 自分の宿の『お客さん』である私を無下にできない部分も、あるかもしれない。

 けれど、友達の言う通り、十日に一回ほどのやり取りは、始まって以来ずっと続いている。
 思わず浮かれてしまうような言葉も、たしかにあった。

 そんなことを、考えていたとき。


「おいっ、委員長」


「……痛っ!」

 後ろから不意に、丸めた紙の束で頭を叩かれた。
 振り返ると、クラスの男子・小宮山(こみやま)が立っていた。

「数学のプリント出してないの、お前だけだぞ」

「えっ? そんなはずないけど……」

 慌てて机の中を探るも、やはり見当たらない。
 面倒くさそうに、無造作に手元のプリントをめくっていた小宮山は、「あ」と気の抜けた声を漏らした。

「前のやつと重なってた。あったわ」

 そう言って、悪びれる様子もなく去っていく。

「……もー」

 その背中に不服な声を投げつけると、小宮山は振り返って「べ」と舌を見せてきた。