触れられなくても、君がいい。


 数行だけの、短い文章。

 ――『また来てほしい』

 これは、宿の息子としての愛想なのだろうか。
 それとも、少しは彼も、私に会いたいと思ってくれているのだろうか――。

 真夏の熱に浮かされた私は、きっと後者なのだと、自分の都合のいいように解釈することにした。


 それから半年以上、文字だけのやり取りを重ねた。
 航からの便箋が増えるたび、私の想いは募るばかりだった。

 私の方は、言葉の端々に好意が滲んでしまっている自覚があったけれど、彼の返事のトーンは相変わらずで、これといった進展はないまま季節は巡った。