黒幕である父親の王子は、用済みとなったジャックを秘密裏に消す算段を立て、王宮の奥で彼の帰りを待っていた
引き出しから回収させた「出生の証拠」を受け取り、王室の闇を完全に葬り去るために。
しかし、王子のもとにジャックが戻ることは二度となかった。
ジャックは最初から、父親のことも、王室のことも信じてなどいなかったのだ
彼は父親を冷酷に出し抜き、手に入れた「出生の証拠」を己の懐に隠したまま、夜霧のロンドンへと姿をくらました
王室の未来をいつでも破滅させられる【最凶のカード】を握り締めて
彼が持ち去ったのは、証拠だけではない。
実の母親から奪った、たった一つの「心臓」
ジャックはそれだけを、誰にも見せない秘密のトロフィーとして自分の体の一部のように大切に抱き抱え、裏社会の深い闇へと永遠に溶けていった
本命の暗殺を終え、心臓を取り戻したジャックが引き揚げたため、路上の切り裂き事件も、テムズ川の胴体事件も、同時にピタッと足跡を絶った。
親である王子もメアリーも、目の前にいた殺人鬼が我が子だと気づかぬまま終わった
1888年のロンドンの霧の底に埋もれた究極の家族の悲劇
切り裂きジャック
――彼は王室の手駒などではなく、最後まで、己の愛と師匠の技術を貫いた、孤独な闇の支配者だったのだ。



