無口な君は、誰よりも綺麗だった。

でも次の瞬間奈々さんは恐る恐る私の前まで歩いてくると――

その場で、ゆっくり膝をついた。


「……え?」


そして、そのまま深く頭を下げる。


「園崎詩さん……。」


震える声が静かな屋上に響く。


「ごめんなさい、ギターの弦を切ったり……。
譜面やピックを隠したり……。」


「たくさん酷いことをして、ごめんなさい。」


奈々さんは涙をこらえながら、小さな紙袋を差し出した。

「これ……、償いにはならないけど。
今まで切った分の弦と、隠したピックです。」


震える手。

何度も勇気を振り絞ったんだろう。

その手を見た瞬間。

私の目は、ある場所で止まった。


(……この手。)


指先には、何度も弦を押さえてきた跡。

少し硬くなった指先。

小さな傷。

見ただけで分かる。


(この人……たくさん練習してる。)


私は自然とその手を見つめたまま、口を開いていた。

「奈々さん、たくさん練習してるんだね。」


「……え?」

奈々さんが涙で濡れた顔を上げる。

私はその手を見ながら、小さく微笑んだ。