「何か理由があるんだろ?
聞かせてくれない?」
その言葉に、俺の指先がぴくりと動く。
テーブルの下で拳を握りしめると、爪が掌に食い込んだ。
(言えない。)
喉の奥が熱い。
でも、言葉にはできない。
そのちゃんを守るために選んだことだ。
ここで崩すわけにはいかない。
呼吸を整えるふりをして、息を一度だけ吐く。
「……別に、そのちゃんはやっぱりAstralには合わなかった。」
「だから抜けてもらった…それだけだよ。」
言い切った瞬間、胸の奥がぎゅっと締め付けられる。
自分の声が、自分のものじゃないみたいだった。
飛鳥はすぐには反応しなかった。
ただ、まばたきもせずに俺を見ている。
その沈黙が、じわじわと圧になっていく。
「……ふーん。」
ようやく落ちた声は、低くて静かだった。
「そうか。」
たったそれだけ。
なのに、背中に冷たいものが走る。
飛鳥の眉間に、ほんのわずか皺が寄るのが見えた。
少しの間。
カフェのBGMだけがやけに遠く感じる。
そして、飛鳥はもう一度口を開いた。
「じゃあ。本当に詩のこともう必要ないんだ?」
「……ああ。」
即答したはずなのに、声が一瞬遅れた。
喉の奥で何かが引っかかる。



