無口な君は、誰よりも綺麗だった。

(……奏くん?)

私はそっと舞台袖から客席を覗く。

そこには今までで一番大きな景色が広がっていた。

何百人ものお客さん。

そんな中Astralの出番を待っている方がいる。


(そっか……。)


普段よりずっと大きな会場。

リーダーとして、一番プレッシャーを感じているんだ。

私だって少し緊張している。

でも今まで私は何度も奏くんに支えられてきた。

泣いた日も、怖くて前を向けなかった日も。


「大丈夫。」


そう言って、隣にいてくれた。


だから今度は――


私が奏くんを支える番。


私はゆっくり奏くんの前へ歩く。

「奏くん。」


「……はっ。」

名前を呼ばれた奏くんが振り向く。

「そのちゃん。」

笑おうとしている。

でも、その笑顔は少しだけぎこちなかった。

私は何も言わず、一歩近づく。

そして――

ぎゅっ。

そっと奏くんを抱きしめた。

「……!」

奏くんの身体が少しだけ震える。

私は優しく微笑んだ。

「奏くん……大丈夫です。」

「え……。」

「あれを見てください。」

私は客席へ視線を向ける。

「前の方。」

「……?」

奏くんも私の視線を追う。

そこには、小さな男の子がいた。

まだ小学生くらいだろうか。

一生懸命、大きなうちわを掲げている。

そこには可愛らしい文字で、

『Sou』

と書かれていた。