無口な君は、誰よりも綺麗だった。

そのちゃんはゆっくり立ち上がる。

涙の跡はまだ残っていたけど。

その表情は、もうさっきまでとは違っていた。

ギターケースを開けると、大切そうにギターを抱える。

そして、にこっと小さく笑った。

「奏くん。」


「ん?」


「ベース、出してください。」


「せっかくなので……ここで一緒に弾きましょう!」


その一言に、自然と笑みがこぼれる。


「もちろん!」


俺もケースを開き、ベースを取り出した。

夕日に照らされながらチューニングを済ませる。


「何弾く?」


そう聞くと、そのちゃんは迷うことなく答えた。

「この前の新曲、あの曲を弾きましょう。」


「うん、いいよ!」


(……良かった、元気になってくれた。)

音楽が、そのちゃんを笑顔にしてくれた。

やっぱりそのちゃんには音楽が似合う。

「じゃあ、いくよ。」


「はい。」


二人で目を合わせる。

そのちゃんが小さく頷いた。

その合図だけで十分だった。

ベースの音が静かに響く。

少し遅れて。

そのちゃんのギターが優しく重なった。

海風が髪を揺らす。

波の音も、まるで演奏に加わっているみたいだった。

そしてそのちゃんは小さく息を吸い、優しく目を閉じて歌い始めた。