無口な君は、誰よりも綺麗だった。

「……っ私。」

声にならない。

伝えたいことはたくさんあるのに。

涙が邪魔をして、言葉にならない。

俺は急かさず、静かに待つ。

そのちゃんが、自分の言葉で話してくれるまで。

波の音だけが、二人の間を優しく包み込んでいた。

しばらく波の音だけが響く。

そのちゃんは、ぽつりと呟いた。

「逃げ出すなんて……っ、やっぱり私、弱いですね。」

その声は、自分を責めるようだった。

(違うよ。)

そのちゃんは弱いんじゃない。

誰よりも優しくて。

誰よりも頑張り屋だから。

限界まで我慢してしまうだけなんだ。

俺は少し笑って、そのちゃんに手を差し出した。

「そのちゃん。」


「……?」


「一瞬だけ、ギター借りてもいい?」

そのちゃんは少し驚いたように目を丸くしたあと、小さく頷く。


「……はい、どうぞ。」


俺はギターを受け取る。

少しだけ深呼吸をして。

初めてそのちゃんと出会った日のことを思い出した。

屋上で聴いた、あの優しいメロディー。

心を救ってくれた音。

その記憶を辿るように、ゆっくり弦へ指を添える。