無口な君は、誰よりも綺麗だった。

沈黙が流れる。


やがて、園崎さんは小さく息を吐くと、振り返らないまま口を開いた。


「……聞いてたんですか。」


その声は震えるほど小さくて、風にさらわれそうだった。


「勝手にごめん……。」


すると園崎さんは少しだけ俯き、ギターケースを握る手に力を込めた。


「……聞かなかったことにしてください。」


「え……?」


「さっきのことも、私のことも……全部。」


そう言い残すと、園崎さんは俺の返事を待たずに歩き出す。


「あっ、待っ──!」


呼び止めても、その足は止まらない。


屋上の扉が静かに閉まる音だけが、夕暮れの空に響いた。


残された俺は、ただ閉まった扉を見つめることしかできなかった。


(……なんでだ。)


あんなにも綺麗な歌声なのに。


どうして、隠そうとするんだ。


どうして、誰にも聴かせたくないんだろ。


俺はまだ、この時知らなかった。
彼女が二度と人前で歌わないと決めた理由を。