3本の赤いチューリップに、気持ちを込めて。

最後までお読みいただき、本当にありがとうございました!
著者の私から、この物語を読み終えたみなさまへ。
感謝の気持ちとこの作品に込めた裏話、そして少しだけ私自身の個人的な思い出をお話しさせていただこうと思います。
少し長くなりますが、どうか最後までお付き合いいただけたら嬉しいです。




★まずは、作品に出てきたキャラクターたちについて。

主人公の凛奈と、先輩の結翔。
二人の「2歳差」という埋められない距離感、そして言葉にできないまま三本の赤いチューリップだけを手渡して走り去るというラストシーン。みなさんの心にはどのように届いたでしょうか?

チューリップの花言葉は「愛の告白」。
そして「3本」という本数が持つ意味は「愛しています」。
言葉にすればたった数文字のその想いを、声に出して伝えることができなかった凛奈。
だけど、その沈黙と涙と鮮やかな三本の赤に、彼女の初恋のすべてが詰まっています。
振られるのが怖いから逃げたのではなく、声を出すと涙が溢れて崩れてしまうから、あえて無言で渡すしかなかった。
そんな甘酸っぱくて少し苦い、不器用な恋の結末を描きたくてこのお話を書きました。

……と、ここでひとつ、賢明な読者のみなさまなら「あれ?」と気づいたかもしれないポイントについて触れなければなりません。

そうです。作中で、凛奈のライバル(?)として登場し、バレンタインの日に結翔先輩に堂々と告白していたあの学校一の美少女――「川北翠」です!

みなさま、彼女の名前を覚えていますか……?

……ふふふ。そうなんです!
気づいた方はかなりのマニア(そして私の作品のヘビー読者様)です!

実は彼女、私のBL作品で初挑戦であった――『「俺、こんなことするのお前だけだから」に出てきた、あの生意気な後輩くんに不覚にもときめいてしまいました』……でおなじみの、あの「川北翠」ちゃんなんです!!

「えっ、まさかのスターシステム!?」

「あっちのBL世界線と繋がってるの!?」

と驚かれた読者の方も多いかもしれません(笑)。
『俺、こんなことするのお前だけだから』の作中で、生意気で素直じゃない後輩くんに振り回され、不覚にもキュンとときめいてしまっていたあの世界観。
そこに登場していた川北翠ちゃんが、巡り巡って今作『3本の赤いチューリップに、気持ちを込めて。』でも、完璧で美しくて誰もが憧れる「高嶺の花」として特別出演してくれました!

あっちの作品では生意気な武琉に恋された彼女ですが、こちらの世界線では高3の美少女として結翔先輩にストレートに告白する勇気ある女の子として存在しています。
物語の裏側でキャラクターたちが生き続けていて、別の作品でふっと交差する……そんなスターシステムのような仕掛けをどうしても入れてみたくて、今回こっそり登場させてしまいました。
あちらの作品を読んでくださっていた方には、「あ! 翠ちゃんだ!」とニヤリとしていただけたら最高に嬉しいです。






そして、ここからは少しだけ、私自身の「現実の恋」のお話をさせてください。

この『3本の赤いチューリップに、気持ちを込めて。』では、主人公の凛奈が「高1と高3という2歳差」に悩み、背伸びをしても届かない先輩の背中に恋をする姿を描きました。

実は、この物語を書く原動力になったのは、私自身の過去の甘酸っぱい(そして苦い)思い出です。

作中では「2歳差」を描きましたが、私自身が昔、本当に好きだったのは「1つ上の先輩」でした。

高校生のときの1歳差、あるいは2歳差って、大人になってからの1歳や2歳とは全然違いますよね。
たった1年、たった2年早く生まれて校舎の違う階にいるだけで、まるで生きている世界が違うかのように遠く感じてしまう。
下級生というだけでどこか子ども扱いされている気がして、同じ目線に立つことすらできないような、あの独特の焦燥感と諦め。

私の場合は、凛奈と結翔先輩のように同じ委員会ですらありませんでした。

学校も違う。
面識もまったくない。
話したことなんて、ただの一度だってない。

私が知っていたのは、ただ「その先輩のお名前」だけでした。

友達づてに名前を聞いて、遠くから姿を見かけるだけで胸がぎゅっと苦しくなって、すれ違う瞬間は心臓が口から飛び出そうになるくらいドキドキして。
名前しか知らないのに、話しかける勇気なんて当然あるわけもなくて、ただ遠くからその背中を目で追うことしかできない日々。

「名前しか知らない相手に恋をするなんて」と、当時の自分でもどこかで呆れていたかもしれません。
でも、理由なんて説明できないのが恋なんですよね。
接点が何ひとつないからこそ、私の中で先輩の存在はどんどん大きくなって、綺麗で、届かない光のようになっていきました。

結局、私のその片思いは、一言も言葉を交わすことがないまま、先輩の卒業とともに静かに終わりました。

「好きでした」とも言えなかった。

名前しか知らなかった私は、花束を渡すことすらできませんでした。

だからこそ、この物語の主人公・凛奈には、どんなに不器用で、どんなに格好悪くて、声が出なかったとしても――「3本の赤いチューリップを渡す」という一歩を踏み出させてあげたかったのかもしれません。

たとえ無言であっても。
渡した瞬間に逃げ出すように走り去ったとしても。
自分の気持ちを相手の手元に残すことができたなら、それはきっと、彼女にとって一生忘れられない「特別な初恋の証」になるはずだから。

「言葉にできない恋」は、決して敗北ではありません。
伝えられなかった想いも、届かなかった言葉も、あの日流した涙も、すべてがその人の青春を彩る大切な宝物になります。

作中で凛奈が渡した三本の赤いチューリップ。
結翔先輩の手元に残されたその鮮やかな赤は、これから先、先輩が春を迎えるたびに、チューリップの花を見るたびに、ふと思い出す「切なくて愛おしい記憶」として残り続けるのだと思います。

みなさんには、今でも忘れられない「名前しか知らなかった誰か」や、「言葉にできなかった想い」はありますか?

もしこの物語を読んで、胸の奥に眠っていた甘酸っぱい思い出や、誰かを愛おしく思う気持ちが少しでも蘇ったなら、作者としてこれ以上の幸せはありません。

最後になりますが、この作品を最後まで温かい目で見守り、読んでくださった読者の皆様に、心からの感謝を申し上げます。
そして、素晴らしいキャラクターたち(と、別作品から駆けつけてくれた翠ちゃん!)にも、最大の愛を込めて。

また次の物語でお会いしましょう!