因縁の魔王陛下と聖女令嬢~溺愛の呪いが解けない~

 その後もエリーゼの指示により、アゼルは世界の国々と和平条約を結んでいった。
 アゼルを支配して意のままに動かすエリーゼは、前世の時と同じく最強の女王の威厳と風格を持ち合わせていた。
 そして全世界との和平を成し遂げた時、アゼルとエリーゼの願望を合わせた『世界平和征服』が達成されたのである。

 そんな平和な時代が訪れてから、少しの時が流れる。

 その日、アゼルは城の一室にて堂々と人々に呼びかける。

「よぉし、貴様ら、集まれ! 軍事会議をするぞ!」

 その一声で、部屋に散らばっていた者たちがアゼルの前に集合する。それは幼児から10歳くらいまでの子供たち、総勢6人。

「はい! お父様!!」
「あい、おとさま~」
「お父様、今日のギダイは何ですか!?」

 男子3人、女子3人。この6人はエリーゼとアゼルの子供たちである。そして、この部屋は玩具やファンシーな小物が揃えられた子供部屋であった。
 そんな可愛らしい部屋で、黒衣の魔王は真剣に子供たちの相手をする。

「今日の議題は世界征服だ!」
「かっこいい!」
「ボク、お父様みたいな魔王になりたい!」
「ふふ、そうだろう。世界征服の暁には貴様らに国を1つずつ与えてやるぞ」

 長く続いた世界平和に飽きてきたアゼルは、子供たちと共に世界征服に乗り出す気でいる。一体どこまで本気なのか。
 しかし子供部屋のドアが開くと空気は一変する。子供たちは一斉に黙り、アゼルすらも口を閉じて背筋を伸ばす。

「アゼル、子供たちと変な遊びをするんじゃないわよ」

 部屋に入ってきたのは、泣く子も黙る女王……もとい王妃のエリーゼ。その腕の中には赤子を抱いている。
 さらに腹部は大きく膨れていて、その中には8人目の子供を宿している。つまり現時点でエリーゼとアゼルの子供は総勢8人いる。
 アゼルはエリーゼの隣に移動すると腰を抱き寄せて囁く。

「遊びではない、オレは本気だ。世界征服のためには戦力を増やさないとだな……」
「バカ言ってんじゃないの。もう子供は十分でしょ」
「本当は? 素直になれ。もっと欲しいのだろう?」

(ぐぅぅ……誰が『欲しい』なんて言ってやるもんですか……!)

 本心では、アゼルとの子なら何人でも産みたいと思ってしまう。アゼルを支配しているようで、やはり支配されているのはエリーゼだった。

(全ては呪いのせいよ、溺愛の呪いのせいで!)

 溺愛の呪いはとっくに解けているのに、まだ気付いていない。
 その勘違いが続く限り、そこに真実の愛がある限り、溺愛の呪いは永遠に解けない。

「世界征服よりも世界旅行がいいわ。お腹の子が少し大きくなったら、みんなで行きましょう」
「……む、まぁ、それもいいな。さすがはエリーゼ、愛してるぞ」
「はいはい、愛してるわよ」

(それでも、幸せだから……まぁ、いいか)

 因縁の魔王陛下と聖女令嬢。決して解けない溺愛の呪いの物語は永遠に続いていく。

―完―