セレンは最強ではないにしても大聖女には変わりはなく、呪いを感知する能力も人並み外れている。
しかし今のアゼルは人間なので魔力は持たずも呪いも使えない。セレンが感じ取ったのは、エリーゼがアゼルに跳ね返した『溺愛の呪い』であった。
「アゼル様……この呪いは誰が?」
「呪いだと? かけられた覚えなどない」
アゼルは前世でエリーゼに溺愛の呪いをかけたが、今世のエリーゼによって半分ほど『呪い返し』された事に気付いていない。
セレンは呪いに気付いて納得した。アゼルがエリーゼを溺愛するのは、この呪いのせいなのだと。
アゼルはセレンの両肩を掴んで自分の体から引き離そうとする。
「訳の分からない事ばかり言うな。部屋に戻れ。これ以上、勝手な事をするなら本当に監禁するぞ」
これは脅しでも何でもない。どうせ城からは逃げられないと思って、セレンの部屋を施錠せずに自由にさせていたのは甘かった。
しかしセレンは密かに両手に聖力を溜め込んで、それを一気にアゼルの胸に触れて解き放った。
「ぐっ……貴様、何を……!?」
「アゼル様の呪いを解いてあげる! そうすれば私を選ぶはずよ!!」
アゼルの全身が、国境で見た黄金の光と同じ眩しさに包まれていく。しかし同時にセレンは聖力を跳ね返す強力な呪いに押されて顔を歪める。
(なんて力なの……!? 呪いを解けない……!)
前世の魔王アゼルによる『溺愛の呪い』の魔力は、現代の大聖女であるセレンの聖力を遥かに凌ぐ。セレンの放った聖力を全て押し返すほどの力だった。
自分の力では呪いを解く事は不可能だと察したセレンは別の方法を取るしかなかった。
(ならば、呪いを『封印』するわ!!)
アゼルの魂を取り囲む呪いの効果を、聖なる結界で覆って封印する。
セレンが全力で聖力を注ぎ込み続けて、やがて光が収まると時が止まったかのような静寂に包まれる。
聖力を使い果たしたが手応えはあった。封印は成功したはず……そう思ったセレンは両手を下ろすと息を整えながらアゼルの顔を見上げる。
「貴様……オレに何をした?」
アゼルの瞳は、先ほどよりも邪悪な赤いオーラを纏って鈍く光り輝いている。まるで魔王……いや、悪魔そのもの。
恐怖を感じたセレンは、夜伽という目的を忘れてアゼルから身を引いた。しかしアゼルに片腕を掴まれて強引に引き寄せられる。
「……ふん。いいだろう、最強の聖女よ。貴様を『戦場で』使ってやる」
「え……?」
「貴様の力で世界を手に入れる。拒否権はない。拒めば命はない」
「い、いや……」
セレンは顔を横に振るが、現実からは逃れられない。アゼルは先ほどまでとは違う。冷酷非道に変わりはないが、そこに愛も人情もない。完全に『人らしさ』を失っていた。
アゼルにかけられた『溺愛の呪い』は封印された。しかし同時に、アゼルの魔力がセレンの聖力に反発した反動で、魂の奥底に眠っていた『前世の本性』を覚醒させてしまった。
エリーゼへの溺愛が消えたアゼルに残されたのは、世界征服という野望だけ。
今のアゼルはデヴィール国の王ではない。かつての魔国の魔王・アゼルであった。
しかし今のアゼルは人間なので魔力は持たずも呪いも使えない。セレンが感じ取ったのは、エリーゼがアゼルに跳ね返した『溺愛の呪い』であった。
「アゼル様……この呪いは誰が?」
「呪いだと? かけられた覚えなどない」
アゼルは前世でエリーゼに溺愛の呪いをかけたが、今世のエリーゼによって半分ほど『呪い返し』された事に気付いていない。
セレンは呪いに気付いて納得した。アゼルがエリーゼを溺愛するのは、この呪いのせいなのだと。
アゼルはセレンの両肩を掴んで自分の体から引き離そうとする。
「訳の分からない事ばかり言うな。部屋に戻れ。これ以上、勝手な事をするなら本当に監禁するぞ」
これは脅しでも何でもない。どうせ城からは逃げられないと思って、セレンの部屋を施錠せずに自由にさせていたのは甘かった。
しかしセレンは密かに両手に聖力を溜め込んで、それを一気にアゼルの胸に触れて解き放った。
「ぐっ……貴様、何を……!?」
「アゼル様の呪いを解いてあげる! そうすれば私を選ぶはずよ!!」
アゼルの全身が、国境で見た黄金の光と同じ眩しさに包まれていく。しかし同時にセレンは聖力を跳ね返す強力な呪いに押されて顔を歪める。
(なんて力なの……!? 呪いを解けない……!)
前世の魔王アゼルによる『溺愛の呪い』の魔力は、現代の大聖女であるセレンの聖力を遥かに凌ぐ。セレンの放った聖力を全て押し返すほどの力だった。
自分の力では呪いを解く事は不可能だと察したセレンは別の方法を取るしかなかった。
(ならば、呪いを『封印』するわ!!)
アゼルの魂を取り囲む呪いの効果を、聖なる結界で覆って封印する。
セレンが全力で聖力を注ぎ込み続けて、やがて光が収まると時が止まったかのような静寂に包まれる。
聖力を使い果たしたが手応えはあった。封印は成功したはず……そう思ったセレンは両手を下ろすと息を整えながらアゼルの顔を見上げる。
「貴様……オレに何をした?」
アゼルの瞳は、先ほどよりも邪悪な赤いオーラを纏って鈍く光り輝いている。まるで魔王……いや、悪魔そのもの。
恐怖を感じたセレンは、夜伽という目的を忘れてアゼルから身を引いた。しかしアゼルに片腕を掴まれて強引に引き寄せられる。
「……ふん。いいだろう、最強の聖女よ。貴様を『戦場で』使ってやる」
「え……?」
「貴様の力で世界を手に入れる。拒否権はない。拒めば命はない」
「い、いや……」
セレンは顔を横に振るが、現実からは逃れられない。アゼルは先ほどまでとは違う。冷酷非道に変わりはないが、そこに愛も人情もない。完全に『人らしさ』を失っていた。
アゼルにかけられた『溺愛の呪い』は封印された。しかし同時に、アゼルの魔力がセレンの聖力に反発した反動で、魂の奥底に眠っていた『前世の本性』を覚醒させてしまった。
エリーゼへの溺愛が消えたアゼルに残されたのは、世界征服という野望だけ。
今のアゼルはデヴィール国の王ではない。かつての魔国の魔王・アゼルであった。



