エリーゼが目を覚ますと、知らない部屋のベッドの上に寝かされていた。
(あれ……私、どうしたんだっけ……ここは……?)
壁も床も天井も、そしてベッドすらも全てが純白で眩しい。そこはエリーゼが帰りたいデヴィール国の『黒』とは正反対の色だった。
という事は、ここはウィリアム国の王城。気を失っていたので経緯は分からないが、アゼルがエリーゼの奪還に失敗したのだと分かる。
ふと横を見ると、銀髪の美しい王子の寝顔が視界の全面に飛び込んだ。しかも至近距離で。
「え!? ちょ!? ちょっと、カイン様!?」
エリーゼの隣ではカインが添い寝をしていた。エリーゼは反射的に起き上がると、まず自分の服を確認する。
(服は……着てる! 何も……されてない!?)
服は国境に出かけた時のままの白いドレスで乱れてはいない。アゼルの例もあるので、また寝ている間に『やられて』しまったのかと危惧した。
ふと視線を下げてベッドの上を見ると、エリーゼの叫び声にも反応せずにカインは未だに寝息を立てて眠っている。
(なんなの、この人、何考えてるの!?)
今すぐにベッドから蹴り落としてやろうと思ったが、どうもカインの様子がおかしい。安らかに眠っているかと思ったら、眉をしかめて唇を噛み締めて辛そうな顔をしている。
悪夢でも見ているのか、銀色の髪の隙間から見える額には汗が滲んでいる。そして固く閉ざされた唇を少しだけ開けて声を絞り出す。
「エリーゼ……様……」
自分の名を呼ぶカインの声が、単なる寝言ではないと感じ取ったエリーゼの瞳と心が激しく揺れ動く。
(カイン様……前世の夢を見ているのね)
直感で確信したエリーゼは、カインの触れてはいけない心の奥底を垣間見た罪悪感に胸が痛む。そしてカインが、こんなにも苦しそうにしている理由にも。
エリーゼは重大な思い違いに気付いた。前世のカインは本気でエリーゼを愛していたのだと。
カインは今、愛する人に殺された、その残酷な過去の最期のシーンを夢で見ている。それはカインが何度でも繰り返し見る夢であり苦しみで、永遠に終わらない悪夢なのだと知った。
「カイン様、起きて」
その悪夢を断ち切ろうとして、エリーゼは優しい声色でカインの体を揺する。悪夢から目覚めたカインは一気に目を見開く。
呼吸を荒くしながら虚ろな銀の瞳の焦点を目の前にエリーゼに合わせる。すると突然、ふわっとした温かさに包まれた。
エリーゼがカインの背中に腕を回して、包み込むように優しく抱きしめている。
「エリーゼ……様……? ここは……僕は……」
「大丈夫、それは夢よ。カイン様はちゃんと生きてるから安心して」
夢の内容を見透かされたカインは、驚きよりもエリーゼの温かさに安堵して呼吸が落ち着いていく。
逆にエリーゼは、カインの深層心理を知って今後の不安が胸を襲う。
(もし、カイン様が前世の記憶を取り戻したら……)
そうなればカインは『本気で』エリーゼを愛するのかもしれない。しかしエリーゼはカインに愛されるのが怖いと思う。
前世と同じ運命を辿るかのように、現世でもエリーゼはアゼルを愛し、カインがアゼルと敵対した。それでもエリーゼは前世と同じ悲劇を繰り返したくはない。
(あれ……私、どうしたんだっけ……ここは……?)
壁も床も天井も、そしてベッドすらも全てが純白で眩しい。そこはエリーゼが帰りたいデヴィール国の『黒』とは正反対の色だった。
という事は、ここはウィリアム国の王城。気を失っていたので経緯は分からないが、アゼルがエリーゼの奪還に失敗したのだと分かる。
ふと横を見ると、銀髪の美しい王子の寝顔が視界の全面に飛び込んだ。しかも至近距離で。
「え!? ちょ!? ちょっと、カイン様!?」
エリーゼの隣ではカインが添い寝をしていた。エリーゼは反射的に起き上がると、まず自分の服を確認する。
(服は……着てる! 何も……されてない!?)
服は国境に出かけた時のままの白いドレスで乱れてはいない。アゼルの例もあるので、また寝ている間に『やられて』しまったのかと危惧した。
ふと視線を下げてベッドの上を見ると、エリーゼの叫び声にも反応せずにカインは未だに寝息を立てて眠っている。
(なんなの、この人、何考えてるの!?)
今すぐにベッドから蹴り落としてやろうと思ったが、どうもカインの様子がおかしい。安らかに眠っているかと思ったら、眉をしかめて唇を噛み締めて辛そうな顔をしている。
悪夢でも見ているのか、銀色の髪の隙間から見える額には汗が滲んでいる。そして固く閉ざされた唇を少しだけ開けて声を絞り出す。
「エリーゼ……様……」
自分の名を呼ぶカインの声が、単なる寝言ではないと感じ取ったエリーゼの瞳と心が激しく揺れ動く。
(カイン様……前世の夢を見ているのね)
直感で確信したエリーゼは、カインの触れてはいけない心の奥底を垣間見た罪悪感に胸が痛む。そしてカインが、こんなにも苦しそうにしている理由にも。
エリーゼは重大な思い違いに気付いた。前世のカインは本気でエリーゼを愛していたのだと。
カインは今、愛する人に殺された、その残酷な過去の最期のシーンを夢で見ている。それはカインが何度でも繰り返し見る夢であり苦しみで、永遠に終わらない悪夢なのだと知った。
「カイン様、起きて」
その悪夢を断ち切ろうとして、エリーゼは優しい声色でカインの体を揺する。悪夢から目覚めたカインは一気に目を見開く。
呼吸を荒くしながら虚ろな銀の瞳の焦点を目の前にエリーゼに合わせる。すると突然、ふわっとした温かさに包まれた。
エリーゼがカインの背中に腕を回して、包み込むように優しく抱きしめている。
「エリーゼ……様……? ここは……僕は……」
「大丈夫、それは夢よ。カイン様はちゃんと生きてるから安心して」
夢の内容を見透かされたカインは、驚きよりもエリーゼの温かさに安堵して呼吸が落ち着いていく。
逆にエリーゼは、カインの深層心理を知って今後の不安が胸を襲う。
(もし、カイン様が前世の記憶を取り戻したら……)
そうなればカインは『本気で』エリーゼを愛するのかもしれない。しかしエリーゼはカインに愛されるのが怖いと思う。
前世と同じ運命を辿るかのように、現世でもエリーゼはアゼルを愛し、カインがアゼルと敵対した。それでもエリーゼは前世と同じ悲劇を繰り返したくはない。



