因縁の魔王陛下と聖女令嬢~溺愛の呪いが解けない~

 牢屋の中に残されたアーサーとレミアルは、未だに二人の世界を繰り広げている。レミアルは頬を赤く染めて、すっかり恋する乙女の顔になっている。

「たとえ私がアーサー殿の趣味ではなくても……それでも私は、あなたを……」

 レミアルはアーサーに『趣味ではない』と言われた事がショックで、再び泣きそうな顔になる。
 ここで初めてアーサーが少し動揺した。

「そういう意味ではない。私はお前が女だとは気付かなかった。甲冑を脱がすまではな」
「……アーサー殿が脱がしたのか」
「……変な事はしていない」

 なぜか二人して黙り込んでしまった。
 つまりアーサーはレミアルを男だと思っていたので『趣味ではない』という発言をしてしまったのだ。

「あの……私はアーサー殿の側で尽くしたい。ダメだろうか」
「それは寝返って我が軍の配下になるという事か? お前が人質である以上、無理な話だ」

 この流れで話を軍事に結びつけるアーサーは罪な戦バカである。エリーゼかセレンがこの場にいたら確実に突っ込む。
 しかしレミアルも真面目で純粋なので、アーサーの言葉を真に受けて沈んだ顔になる。

「……私に人質の価値はない。エリーゼ様の作戦に加担した裏切り者だからな。帰国すれば殺されるだろう」
「ならばなぜ、そこまでしてエリーゼ様に協力した? なんのために?」

 そこに気付かないアーサーは鈍い。レミアルにそれを言わせる誘導尋問なのかと思えてしまうほどに。

「私はアーサー殿の元へ行きたかった。それだけだ」

 レミアルは母国を捨てて決死の思いでデヴィール国に来た。その強く真っ直ぐな想いが、アーサーの心を動かした……かどうかは分からない。

「覚悟は分かった。お前の処遇は私に一任されている。お前に人質以外の役割を与えてやる」

 レミアルの覚悟は分かっても、恋心は理解していないアーサーであった。