因縁の魔王陛下と聖女令嬢~溺愛の呪いが解けない~

 しかし相変わらずクールなアーサーは、レミアルに熱い視線を向けられても少しも感情を揺らさない。

「目が覚めたのか。自力で歩けるか」

 その短い一言で、レミアルはこれが現実である事を認識し始めた。起き上がるとペタンと床に座り込んで呆然とアーサーの顔を見上げる。
 その時レミアルは、自分の肩にかけられた黒い軍服に気付いた。改めて目の前のアーサーを見ると、上着はなく黒いシャツのみ。

(アーサー殿は優しいのだな……あぁ、好きだ、やっぱり好きだ……)

 一気に感情が溢れ出したレミアルは、瞳に涙を浮かべて止まらない想いをアーサーに告げる。

「アーサー殿! 私はずっと夢の中であなたを追いかけていた。今も愛しい気持ちは変わらない。あなたは私の運命の人だから……」

 夢と前世と現世を織り交ぜた、唐突なレミアルの愛の告白が延々と続く。
 訳が分からないアーサーは怪訝な顔をしているが、外野で二人を見守るセレンの方が動揺というか興奮し始めた。

(え!? レミアルとアーサーって、そういう関係だったの!?)

 しかも敵国の将軍どうしの禁断の恋。それを目の当たりにしたセレンの中で、熱い何かが目覚めた。本当の恋を知らないセレンだからこそ純愛は眩しく映る。

(この二人……絶対に結ばせたいわ!!)

 その思考はエリーゼと全く同じ。さすが姉妹としか言いようがない。瞳に光が宿ったセレンは、臆する事なく横のアゼルに顔を向ける。

「アゼル様。ここは二人きりにしてあげるべきよ。さぁ、行きましょう」
「む? まぁ、いいだろう。アーサー、その人質は貴様の好きにしろ」

 いつの間にか主導権をセレンに握られているが、珍しく空気を読んだアゼルはセレンに続いて地下牢から立ち去った。