きみが光るたび、淡くなる

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「雨瑠ちゃんって、今日仕事だよね?」
「あぁ、月葵も午後は仕事だよな。私はもうすぐ出るから、月葵も時間になったら準備するんだぞ」
「はぁい。・・・でも今日の服可愛いね。あー、心配だなぁ。雨瑠ちゃん、こんなに可愛いんだから」
「なんだ急に・・・」
月葵と付き合って2週間。
メンバーの要らない計らいからか、私と月葵は『なめこの味噌汁room』で2人きりになることが多い。
今日だって他のメンバーは朝食を食べた後すぐに自室に帰っていってしまった。
別に、以前と変わったことなんて特にないのにな・・・。

洗面所で身だしなみを確認してカバンを持ち、玄関に向かう。
洗面所と玄関の間にあるリビングでは、テーブルで月葵がエゴサをしており、その顔は真剣そうだ。
あまり周りの評価は気にしすぎないほうがいいがな・・・。

「月葵、・・・行ってきます」
少し悪戯心がうずいて、月葵に近寄って・・・
「あ、雨瑠ちゃ・・・っえ」
スマホを見る月葵の顎に手を添え、顔を上げさせて軽くキスを落とす。
そのまま流れで玄関で靴を履くと。

「・・・雨瑠ちゃん、・・・仕事って何時から?」
「え?あぁ・・・9時からだが・・・」
立ち上がった月葵が近づいてきて質問に答えると、体をくるりと反転させられてドアに背中を押し付けられた。
え、ちょ・・・どういう状況?今から家を出るんだが。
「ならまだ10分は余裕あるね。朝から俺を誘う悪い子には、ちゃんと分からせないと」
濡れた色っぽい瞳で下から覗き込まれ、ちろりと舌が覗く唇が近づいてくる。
「え、待っ・・・」
思わず焦りが大半を占める声で抵抗するも、男の力にはかなわず、身動きが取れない状態で唇が塞がれた。
こ、これから仕事って言ったよな・・・⁉
「はぁ・・・無自覚って末恐ろしいな。でもほんと可愛い・・・♡」
キスの合間になにかを呟きながら月葵が笑み、またキスを深める。
な、長いっ・・・苦しいし、余裕をもって家を出ようとしたのに・・・!
いや、最初にキスを仕掛けたのは私だが・・・。
「・・・っん、ふ・・・」
すべてを吸い取られるように口づけをされ、もう終わったころには息切れぎれ。
パッと月葵を見ると、その唇にはリップがにじんでいて・・・。
「あー・・・!リップが落ちたじゃないか・・・」
「ごめんごめん、雨瑠ちゃんが可愛すぎて我慢できなかった。ちゃんと直してあげるから」
「直すのは自分でやるが・・・」
「いいの。ほらリップ貸して」
カバンからリップを取り出すとあっという間に取り上げられてしまい、月葵の細い指が顎に添えられる。
「じっとしててね~・・・」
顔を少し上にあげさせられ、真剣な顔をする月葵が丁寧にリップを唇に塗り始めた。
そんなに丁寧にやらなくても・・・あとで直せるんだが。
「・・・慣れてるな」
「あ、喋らないでよ、・・・現場でたまに自分でメイクするからね」
そうか・・・メイクも自分でするようになったのか。
最初は専属メイクを雇っていたが、LUXEONのメンバーがいらいないと言うので、今はその時々で用意するようにしている。
「っはい、で~きた!」
「ありがとう・・・じゃあ、行ってくる」
「ん、行ってらっしゃい!・・・あ、夜は俺の部屋来てね。寝室にいるから」
「意味深なこと言うな、明日は朝から仕事だろう」
最後までお茶目な笑みを浮かべた月葵に見送られ、アパートを出る。

少し歩いて振り返ると、
「・・・絹?」
アパートの窓のサッシに肘を掛け、頬杖をつく絹が目に入った。
あまり細かくは見えないが、なんだか憂い気な顔をしている。
なんかあったのか・・・?あ、今ため息ついたぞ。
首を傾げ、帰ったら話を聞こうか迷っていると、不意に絹がこちらを見た。
そしてその表情は一瞬で明るくなり、いつも通りの柔らかい笑顔で手を振られる。
うーん・・・大丈夫、なんだろうか・・・。
とりあえず月葵に絡まれて時間がないのでアパートに背を向けて歩き出し・・・。

やっぱり気になってもう一度だけ振り返ると、絹の部屋の窓から、絹と冬貴が顔を出していた。
冬貴が部屋を訪ねてきたのか・・・絹の頭を撫でているぞ。
冬貴になにかを言われた絹が少し笑い、気合を入れるように頬を叩いて部屋に戻る。
・・・大丈夫、そうだな。私よりも、メンバーのほうが絹のことをわかっている。

そのことに安心し、私はカバンを肩に掛けなおして歩きだした。