最年長側室の覚醒 〜身分の低い私の息子が世継ぎですか? 必ず命を狙われるので、死に物狂いで守ってみせます〜

古き悪法が撤廃され、後宮という名の「美しい檻」が完全に閉鎖された。
それは、これまで義務として、あるいは実家の利権のために集められていた側室たちが、本当の意味で己の人生を取り戻したことを意味していた。

新法発布の翌日、翡翠宮の広間に、かつて生死を賭けて争った4人の妻たちが私服姿で集まっていた。
旅立ちの時を迎え、それぞれの顔には、これまでになく晴れやかで美しい笑みが浮かんでいる。

「ふん、これでようやく、あのがさつなバルトロメウス家の看板を下ろせるよ」

そう言って豪快に笑うのは、第三側室だったブリジェットだ。
ドレスを脱ぎ捨て、真新しい近衛騎士団の軽装甲に身を包んだ彼女は、エレナの前に立つと、親愛の情を込めてその肩を叩いた。

「エレナ、私はレオンハルト陛下直属の【近衛騎士団長】に任じられたよ。これからは側室としてではなく、一人の騎士として、あんたとアルフレッド、そしてこの国を剣で守り抜いてみせるさ!」

「ブリジェット様なら、きっと誰も敵わない最高の団長になりますわ」

エレナが微笑むと、隣から「おーほっほ!」といつもの華やかな高笑いが響いた。
第四側室だったフィオナだ。

「当然ですわ。そして我がローゼンタール家は、王宮への未練などさっぱり捨て、この国の物流をすべて掌握する【王宮特権大商人】へと転身いたします! エレナ様、後宮の予算をケチケチ削っていた頃が懐かしいですわね。これからは私の財力で、この国をいくらでも豊かにして差し上げますわ!」

フィオナは自信に満ちた目で扇をパチンと閉じ、新しい商売の書類を愛おしそうに抱きしめた。

「二人とも、相変わらず騒々しいわね」

呆れたようにため息をついたのは、第二側室だったカタリナだ。
彼女の翡翠色の瞳には、かつての冷徹な陰謀の影はなく、知的な光だけが宿っていた。

「私は、陛下の影として、この国の暗部を監視する【国家情報機関の長】に就任することになったわ。リリィのような悲劇の残党を二度と生まないためにね。……エレナ、何か困った噂を聞きつけたら、すぐに私の耳に届くよう手配してあるわ」

「カタリナ様……」

エレナは、胸がいっぱいになり、目の前の3人の戦友たちを見つめた。

かつては互いを呪い、毒を盛り、陥れ合おうとした敵同士。
しかし、過酷なサバイバルを共に生き抜き、最後は国を救うために背中を預け合ったことで、彼女たちの間には、世界の何よりも強固な【生涯の絆】が結ばれていた。

「みんな、本当にありがとう。貴女たちがいてくれたから、私は、私たちは生き残ることができたわ」

エレナが深く頭を下げると、3人は顔を見合わせ、同時にふっと微笑んだ。

「お礼なんて野暮だよ、エレナ。私たちはもう、檻の仲間じゃない。――これからは、この広い空の下を共に歩む、対等な『友達』なんだからさ!」

ブリジェットの言葉に、フィオナもカタリナも深く頷く。
かつてドロドロの愛憎劇が繰り広げられた後宮から、それぞれの才能を爆発させ、自らの意志で新しい未来へと羽ばたいていく妻たち。
エレナは彼女たちの美しい背中を見送りながら、自らもまた、最愛の家族と共に歩む新しい道へ、一歩を踏み出すのだった。