最年長側室の覚醒 〜身分の低い私の息子が世継ぎですか? 必ず命を狙われるので、死に物狂いで守ってみせます〜

激動のクーデターから数日。

王宮を包んでいた硝煙は消え去り、崩れかけた城壁の間からは、新たな時代を告げる柔らかな朝陽が差し込んでいた。

隣国軍との激戦、そして内通者の粛清によって、王宮は物理的にも政治的にも大きな傷を負った。
しかし、後宮の4人の妻たち――エレナ、カタリナ、ブリジェット、フィオナがそれぞれの能力を遺憾なく発揮し、迅速な戦後処理と配給を行ったことで、王都の混乱は驚くべき速さで沈静化しつつあった。

そしてついに、国の全貴族、そして市井の代表たちが集まる大謁見の間にて、歴史の転換点となる【大御前審判】が幕を開けた。

玉座に座る国王レオンハルトの傍らには、正妻代行として黒い気品あるドレスを纏ったエレナが、毅然とした姿で並び立っている。

「静粛に」

レオンハルトの厳格な声が響き渡り、騒がしかった議場が一瞬にして静まり返る。
王は集まった臣下たちを見渡し、その胸元に刻まれた「王国の悪法」の象徴たる国璽をじっと見つめた。

「此度の未曾有の反乱、その根底にあったのは、我がクインテラ王国が建国以来、何百年もの間頑なに守り続けてきた、ある古代の法律である」

貴族たちがざわめく。
彼らにとって、側室を囲うことは自らの権力基盤そのものだったからだ。
しかし、レオンハルトの言葉に迷いはなかった。

「『妻を5人以上持ち、子は必ず1人とする』。かつて人口危機を救うために作られたこの優生学的なシステムは、いつしか時代に取り残され、女たちの尊厳を奪い、貴族の私利私欲と、他国からの怨嗟を生み出すだけの【歪んだ呪い】へと変質していた。此度の悲劇は、我が国が過去から目を背け続けた報いである」

王の言葉を受け、エレナが一歩前へと進み出た。
その翡翠宮を統べる凛とした眼差しに、反論できる貴族は誰もいなかった。

「法とは、民を、そして家族を守るためにあるべきものです。誰かを犠牲にしなければ成り立たない繁栄など、偽りに過ぎません。私たちは、これ以上この檻の中で涙を流す人間を生み出してはならないのです」

エレナの言葉は、ただの平民の言葉ではなかった。
この凄絶な後宮のサバイバルを生き抜き、自らの知略と絆で国を救った「真の勝者」としての重みがあった。

レオンハルトは立ち上がり、全土に響き渡る声で厳かに宣言した。

「本日を以て、クインテラ王国古法――『五妻一子の法』を【完全に撤廃】する! 今後、王が望む婚姻はただ一つの真実の愛のみであり、後宮という名の生贄の檻は、この瞬間を以て永劫に閉鎖されるものとする!」

「おおおおお……!」

どよめき、そしてやがて、それは地を揺るがすような歓声へと変わっていった。
何世紀にもわたり、数え切れないほどの女たちを縛り、狂わせてきた狂気の法律が。
エレナとレオンハルトの手によって、ついに完全に打ち砕かれた歴史的瞬間だった。

利権を失った古い貴族たちは顔を青ざめさせたが、新しい時代を望む若き騎士や民たちの拍手は鳴り止まない。
エレナは隣に立つレオンハルトと視線を合わせ、静かに微笑んだ。
二人が命懸けで戦ってきた孤独な戦いが、今、最高の形で報われたのだ。