漆黒の布に包まれた、初代国王の真実の記録。
エレナとカタリナが息を呑んでそのページをめくると、そこに記されていたのは、オカルト的な呪いなどではなく、冷徹なまでの【優生学的なシステム】だった。
『我がクインテラ王家は、幾度もの疫病と戦乱により、深刻な人口減少と血の劣化に陥った。
一族の全滅を防ぐには、多様かつ優秀な血を強制的に混ぜ合わせ、強固な次世代を残し続ける他ない。
故に法を定める。
──“王は常に5人以上の妻を持ち、多様な血を交わらせよ。そして、多様な母体から選りすぐられた、最も強健な「最初の1人」を絶対の世継ぎとせよ”』
「呪いではなかった……。これは、王家の全滅を防ぐための、あまりにも冷酷な人口増加の仕組みだったのね」
エレナは古文書を見つめ、愕然とした。
しかし、戦慄すべきはその先だった。
何百年もの時が経ち、王家の人口危機が去った後も、この法律だけが残り続けた。
そして、後宮の議席を維持したい貴族たちの「利権の道具」へと変質し、異国の優秀な血を強制的に奪うための、女たちを縛り付ける歪んだ檻へと成り下がってしまったのだ。
「……だから、レオンハルト様は」
カタリナが悲痛な声を漏らす。
エレナの脳裏に、いつも冷徹で、どこか遠い目をしていた国王レオンハルトの横顔が浮かんだ。
レオンハルトもまた、この悪法に人生を狂わされた被害者だったのだ。
彼は国の存亡と貴族の均衡を守るためだけに、愛しもしない正妻や側室たちを5人以上も娶るという「愛なき結婚」を強制され、孤独に耐え続けていた。
その冷酷な檻の中で、レオンハルトが初めて心から愛し、一人の男として守りたいと願った唯一の存在――それこそが、平民の少女でありながら、自らの足で後宮を生き抜こうとしたエレナだった。
王は、エレナと我が子アルフレッドに、この歪んだ法律の毒(貴族たちの利権争い)が牙を剥かぬよう、あえて冷徹な王を演じ、二人を遠ざけることで必死に盾となって守っていたのだ。
「レオンハルト様……貴方は、どれほどの孤独の中で、私たちを愛してくださっていたの……」
エレナの目から、大粒の涙がこぼれ落ちる。
しかし、その涙はすぐに、後宮のすべてを統べる「母の覚悟」の炎へと変わった。
「カタリナ様。もう、この法律に泣かされる人間を出してはならないわ。レオンハルト様の孤独も、これまでの側室たちの悲劇も、すべて私が終わらせてみせる」
歪んだ法の真実と、レオンハルトの命懸けの愛を知ったエレナ。
彼女の決意は、ただの「後宮での生き残り」から、「この国の歴史そのものを変える戦い」へと昇華していくのだった。
エレナとカタリナが息を呑んでそのページをめくると、そこに記されていたのは、オカルト的な呪いなどではなく、冷徹なまでの【優生学的なシステム】だった。
『我がクインテラ王家は、幾度もの疫病と戦乱により、深刻な人口減少と血の劣化に陥った。
一族の全滅を防ぐには、多様かつ優秀な血を強制的に混ぜ合わせ、強固な次世代を残し続ける他ない。
故に法を定める。
──“王は常に5人以上の妻を持ち、多様な血を交わらせよ。そして、多様な母体から選りすぐられた、最も強健な「最初の1人」を絶対の世継ぎとせよ”』
「呪いではなかった……。これは、王家の全滅を防ぐための、あまりにも冷酷な人口増加の仕組みだったのね」
エレナは古文書を見つめ、愕然とした。
しかし、戦慄すべきはその先だった。
何百年もの時が経ち、王家の人口危機が去った後も、この法律だけが残り続けた。
そして、後宮の議席を維持したい貴族たちの「利権の道具」へと変質し、異国の優秀な血を強制的に奪うための、女たちを縛り付ける歪んだ檻へと成り下がってしまったのだ。
「……だから、レオンハルト様は」
カタリナが悲痛な声を漏らす。
エレナの脳裏に、いつも冷徹で、どこか遠い目をしていた国王レオンハルトの横顔が浮かんだ。
レオンハルトもまた、この悪法に人生を狂わされた被害者だったのだ。
彼は国の存亡と貴族の均衡を守るためだけに、愛しもしない正妻や側室たちを5人以上も娶るという「愛なき結婚」を強制され、孤独に耐え続けていた。
その冷酷な檻の中で、レオンハルトが初めて心から愛し、一人の男として守りたいと願った唯一の存在――それこそが、平民の少女でありながら、自らの足で後宮を生き抜こうとしたエレナだった。
王は、エレナと我が子アルフレッドに、この歪んだ法律の毒(貴族たちの利権争い)が牙を剥かぬよう、あえて冷徹な王を演じ、二人を遠ざけることで必死に盾となって守っていたのだ。
「レオンハルト様……貴方は、どれほどの孤独の中で、私たちを愛してくださっていたの……」
エレナの目から、大粒の涙がこぼれ落ちる。
しかし、その涙はすぐに、後宮のすべてを統べる「母の覚悟」の炎へと変わった。
「カタリナ様。もう、この法律に泣かされる人間を出してはならないわ。レオンハルト様の孤独も、これまでの側室たちの悲劇も、すべて私が終わらせてみせる」
歪んだ法の真実と、レオンハルトの命懸けの愛を知ったエレナ。
彼女の決意は、ただの「後宮での生き残り」から、「この国の歴史そのものを変える戦い」へと昇華していくのだった。



