8時1分。
ここからは、私の大嫌いなダンス練習の時間だ。
いや、大嫌いって言葉では収まりきれないけれど。
ダンス練習はいわゆる個人練。
「サボればいいでしょ?」と思うかもしれない。
でも、ここの周り全部鏡張りのスタジオには監視カメラがついている。
さらに、終わりの時間がこないとこの部屋の鍵を開けてもらえない。
つまり、監禁状態だ。
………はぁぁ、地獄。
今日朝に渡された曲のUSBをパソコンに差し込む。
大体渡される曲は100エイト以上はある。(エイト=8カウント1エイト)
拍速いし曲長いし体力持つわけないのに。
けど結局、持ってしまうんだよね。
今日の曲は『IGNITE』。
ダンスメインの激しい曲。
…………私、こういう系、マジ大っ嫌い。
スピーカーから大音量で力強いビートが流れてくる。
頭の中でビリビリとした音が響く。
これがどうしようもないくらい気持ち悪くて、吐きそう。
踊りたくない。脳はそう拒否しているのに、身体は、なぜか勝手に動いてしまう。
踊っている途中、いきなり寒気と倦怠感が押し寄せてきた。
これは毎回のことだから。大丈夫。気にしたらキリがないし。
身体が重い、痛い、だるい。
そんな症状はあるのに、ダンスと笑顔は崩れない。
もう、そんな自分が嫌だ。
そう思った途端、笑顔が少し歪んだ。
「あ」
ガチャ、と静かにスタジオのドアが開く。
そこにいたのは、綾瀬スミレだ。

