佐伯さんは、私の家庭教師。
私は今12歳、中学1年生くらいだ。
学校は行けずに、家庭教師さんに勉強教えてもらっている。
嘘ついて、ね。
スミレが「2学年上の勉強よ?絶対役に立つわ。」と言ってからずっと2学年上の勉強やってる。
つまり、佐伯さんにとっての私は、中学3年生ってこと。
難しそう、って思うでしょ?
でも、そんなことはない。
だって、幼稚園のころから2学年上の勉強、やってたからね。
私にとってはこれが普通の勉強だし。
佐伯さんは、すごい真面目で厳しい大学生だ。
でも、わかりやすく教えてくれる。
———ガチャリ
リビングのドアが開く。
「おはようございます。渚さん。」
「おはようございます。佐伯さん。」
ニコッと懐っこいような笑顔をうかべる。
ここでの私の名前は、「大河渚」。
中学校3年生っていう設定だ。
「じゃあ、宿題見せてください。」
「はい。」
昨日、猛スピードでやった大量の宿題を見せる。
「はい、100点ですね。順調ですよ。今日は数学です。少し速いですが、相似の図形に入りましょう。」
「わかりました。よろしくお願いします。」
ここから、8時までの時間。
正直言ってしまうと、この時間が一番楽だ。
でも勉強のスピードが速いからしっかり集中しなくてはね。

