「私はね、碧斗。あなたが誰を選ぼうと、本来は口を出すつもりはなかったの。でも……美寿さんへのあなたの接し方は、これまで見てきた誰に対するものとも違う。それがただの婚約者への礼儀なのか、それとも別の感情なのか、私はまだ判断がつかずにいる」
その言葉に、私と碧斗さまは思わず顔を見合わせた。百合乃さまは、既に何かに気づき始めているのかもしれない。
「感情で家の判断を歪めるようなことがあれば、月森流にとって取り返しのつかない禍根になる。だからこそ、私は美寿さんご本人の実力を、自分の目で確かめておきたいの。……これは、意地悪のつもりではないのよ」
その口調には、確かに冷たさだけでなく、家を背負う者としての切実さも滲んでいた。私は父や兄の背中をすぐそばで見てきたのだ……それと同じだ。
私は、膝の上で拳をそっと握りしめた。
「それに佐山國宗様には許可が取れています」
百合乃さまは、三つ折りされた紙を取り出し私に渡した。
【佐山蓮水として香元をしなさい。美寿は、佐山流の者としてどこに出しても恥ずかしくない実力があるのだから。堂々と胸を張ってやりなさい。
私や煌太の香席を補佐してきたのだから大丈夫。
佐山蓮水という名に恥じぬ香席をしなさい】



