花に溺れ、香りに溶ける





 そう説明をしていると「蓮水」と香名で呼ばれた。蓮水なんて呼ぶ人は二人しかいない。


「蓮水は補佐なんかじゃないよ」

「國嘉様……な、なんで」

「いやぁ、全く……熱く語っていた。蓮水は香元をするのを拒否しているだろう? 家元から聞いている」

 
 急に兄が現れたのも驚きだが、拒否してるのを知っていることも驚いた。何も言えないでいると、兄は二人に挨拶をしていた。


「二人とも、じゃあ美寿のことよろしくね。俺は帰るから」

「え、帰るの?」

「あぁ。挨拶回りも終わったし、父さんにも帰ること伝えたし、美寿にも碧斗くんと環家のご令嬢にも挨拶できたからね」

「そ、そうですか」


 兄はそれだけ言って颯爽と去って行った。



「……というか、逆に碧斗くんにはもったいないのでは?」


 そう千夏さんが言うとなぜか全力で縦に首を振る碧斗くんがいた。


「……美寿ちゃん聞いてはいたけど、とてもすごい方だったんだね」

「いや、そんなことはないです。お二人の方が、華道家として活躍されているし……私は資格だけですし。私は何者にもなれてないので」

「私は、ただ親が言うようにやってきただけ。それにただ娘っていう立場を享受してきただけなのよ……だから美寿ちゃんには敵わないな」


 千夏さんはそう言うと、さっきのような敵意はもう感じなかった。


「私はもう行くね。そろそろ、碧斗がイライラし始めるから」

「……千夏」


 碧斗さまが軽く睨むと、千夏さんは悪びれもせず笑って人混みの中へと消えていった。