花に溺れ、香りに溶ける





 そしてその夜、夕食の席で兄にもその話をすると煌太兄さんは箸を止めて、少し考え込むような顔をした。


「月森流の百二十周年記念か。……大きな節目の会だね。百合乃さまが直接招待状を出してきたということは、それなりの意味があると考えた方がいいと思うよ」

「意味?」

「母さんが言うように佐山と月森家の婚約を、正式に世間へ発表する布石なんだろう。……美寿? 緊張してる?」

「……少しだけ」

「大丈夫だよ。美寿は、佐山家の娘として、恥じることのない立ち居振る舞いをちゃんと身につけてるじゃないか。それに、俺より先に中許を取った。自信を持っていい」

「でも、それは……あの時はお兄様も大変だったときじゃない。それに今は奥許を合格してお弟子さんだっている。私は、時間があっただけよ」


 みな、中許を早くに取ったから賞賛するが私は本当に時間があったのだ。だからすごくない。


「美寿は自己評価が低い。もっと自信持って良いんだから。父さんも奥許に向けて準備を始めるって言っていた」

「そうなのですか? でも、私はそこまでは……」

「それに美寿は可愛いし。俺の弟子の一人が美寿のこと狙ってるくらいだからなー」


 兄の冗談に、ふふっと笑みが出る。少しだけ勇気をもらった気がした。