花に溺れ、香りに溶ける





「珍しいの?」

「えぇ。最近のパーティーの招待状は、大体、郁斗さんからだったからね。それに宗一郎さんにきていたものだったし」

「そう、なんですか」

「うん。お互い新婚の時はお茶会をよくやっていたのよ? 仲良かったんだけど、いつの間にか疎遠になってしまって。だけど、彼女から直接ってことは碧斗くんとあなたの婚約が、そろそろ正式に世間に発表される頃合いなのかもしれないわね」

「発表……」

「今までは身内だけの話だったけど、来年には碧斗くんも十九歳でしょう。そろそろ、というところじゃないかしら……彼も大学生とはいえ、次期家元だもの」

 母の言葉に、私は複雑な気持ちになった。婚約が世間に発表されるということは、これまで以上に、月森家の婚約者として振る舞うことを求められるということだ。


「着物、どうしましょうか。今回は格の高い茶会だから、それなりのものを誂えないと」

「お母さま、そんなにすぐ用意できるものなの?」

「私は、呉服屋の娘だったのよ? お兄様に頼めば大丈夫」


 母は楽しそうに笑いながら、早速電話をかけ始めた。こういうとき、母の行動力にはすごいのだ。スマホを耳に当てて一言二言話すと、私に「今からすぐに来るって」と言った。


「伯父さま、忙しいんじゃないの? こんな急に」

「兄さんはあなたに甘いからね。似合うものいっぱい持っていくって言っていたわ」


 その一時間後、本当に伯父さまはやってきて着せ替え人形のように何着か着せられた。