花に溺れ、香りに溶ける

 




 あれから1週間がたった。

 その間、直接会うことはなかったけれど、私たちは普段通り、稽古の合間にメッセージのやり取りを続けていた。
 そんな時、月森家から1枚の招待状が届いた。


【月森流120周年記念 いけばな展のご案内】


 差出人は、月森百合乃さまだった。彼女は、千曲流日本舞踊の今の家元の妹で、自身も日本舞踊家の千曲鳳翠(ほうすい)として、そしていけばなの師範としても有名な月森家を支える大事な人だ。

 今は舞台に立つことはないけれど、動画配信や、以前監修したドラマを見たことがある。とても素敵だったのを覚えているし、いけばなのほうも素敵だった。碧斗さまのお父さんである月森流の家元に次いで、実力がある人なのだ。


「珍しいこともあるものね。百合乃さんから、うちに直接招待状が来るなんて」



 母がしみじみとそう言うのを聞きながら、私は招待状に書かれた達筆な文字を、じっと見つめていた。