花に溺れ、香りに溶ける





 いつもなら、話の腰を折られることを嫌って最後まで聞いてくるくせに今夜の彼は、まるで何かから逃げるように会話を切り上げた。

 その反応が、かえって私の胸をざわつかせる。碧斗さまが、本当に自分の意志で私を望んでくれたのだとしたら――それは、嬉しいけれど。でも、母が言ったことが本当とも限らない。父も濁していたし、本当の政略的な婚約かもしれない。

 後ろめたいのか、それを知られることを恐れているのか分からない。だけど、もう一度、画面に文字を打ち込んでみることにした。


【わたし、怒らせてしまいましたか?】


 送ってすぐ、後悔した。こんな責めるような聞き方をしたら、気分悪くなる……けれど既読がついてから数分後、思いがけない返信が届いた。


【怒ってない。ただ、美寿にだけは、格好悪いところを見せたくないだけだ】

【格好悪いところ、ですか?】

【うん。だから、また話す】


 きっと今日は話してくれないと思って【わかった】と一言だけ送信した。


【ありがとう。近いうちに、ちゃんと話す。今日はおやすみ】


 その一言を最後に、その夜のやり取りは終わった。