春のその先で、君と。




「りのん!」



「ん?」



休み時間。


陽菜が机に身を乗り出してきた。



「テストまで、あと二週間だね。」



「そうだね。」



机の上に置かれたテスト範囲表を見る。



「陽菜は今回も塾?」



「もちろんそう、、」



陽菜は大きくため息をついた。



「赤点だけは勘弁……。」



「ふふっ。」



思わず笑ってしまう。



「りのんは?」



「え?」



「柏木くんと図書館でしょ?」



「……えっ?」



思わず目を丸くする。



「まだ、何も決めてないよ。」



「えー?」



陽菜が不思議そうな顔をする。



「でも、絶対行くと思ってた。」



「私は行く気はしてたけど……。」



少し照れながら続ける。



「でも、湊くんは全然知らないし……。」



そのとき。


ピコン。


机の上に置いていたスマホが、小さく音を鳴らした。



「ん?」



私はスマホを見る。


通知の表示。


そこには。


**柏木湊** の名前があった。



「……!」



思わず顔を上げる。


でも。


この教室に湊くんはいない。


私はゆっくりスマホを手に取った。


そして。


通知を開く。


そこに書かれていた言葉は。



『図書館で勉強しない?』



「……っ。」



思わず、頬が緩んでしまう。



「なに?」



陽菜が気になったように聞いてくる。



「……。」



私はスマホを隠そうとする。


でも。



「……あ。」



陽菜が、ひょこっと覗き込んできた。



「図書館で勉強しない?」



「ひな!?」



「誘う心配なしだね!」



陽菜が楽しそうに笑う。



「もー! ひなぁー!」



「ふふっ!」


私はスマホを胸の前に抱えながら、思わず頬を膨らませた。


でも。


もう一度、画面に視線を落とす。



『図書館で勉強しない?』



その短いメッセージが。


なんだか、とても嬉しかった。


去年だったら。


こんなふうに当たり前みたいに。


一緒に勉強する約束なんて、できなかったかもしれない。