春のその先で、君と。



廊下を少し進んだところで、陽菜が足を止めた。



「……いた。」



「え?」



陽菜の視線を追う。


教室の中。


友達と話している湊くんの姿が見えた。



「湊くん……。」



「うん。」



「……。」



さっきまで普通に歩けていたのに。



教室のドアが近づくにつれて、どんどん心臓が速くなっていく。


そして。


教室のドアの前まで来たところで。


私は急に、その場にうずくまった。



「りのん!?」



陽菜が驚いた声を上げる。



「大丈夫?」



「……。」



「無理なら、やめよう!」



「ううん。」



私は顔を上げる。



「……行く。」



「ほんと?」



「うん。」



立ち上がろうとする。


でも。


やっぱり足に力が入らない。



「でも……。」



「ん?」



「なんて聞けばいいの?」



陽菜は少しだけ目を丸くして。


それから、ふっと笑った。



「ただ、今日の放課後空いてるか聞くの!」



「……それだけ?」



「それだけ!」



「でも……。」



「予定があったらどうしようって?」



私は小さく頷く。


もし。


湊くんに予定があったら。


誰かと約束していたら。


私と帰るつもりなんて、なかったら。


そう思うと。


胸の奥が、きゅっと痛くなる。



「……緊張するよ。」



「大丈夫!」



陽菜が笑う。



「恋人なんだから!」



「……。」



「ほら。」



陽菜が私の手を握る。