しばらくして。
母さんが、ゆっくり口を開いた。
「……ごめんね」
「え?」
「母さん、湊のこと、何も考えてなかった」
母さんは少し俯いた。
「自分のことで精一杯で……湊がどう思ってるのか、ちゃんと考えてあげられなかった」
俺は、しばらく黙っていた。
でも。
言いたかったことは、ちゃんと分かっていた。
「わかってるよ」
「……湊」
「母さんが、俺に父さんみたいになってほしくないって思ってたことも」
その言葉に、母さんが顔を上げる。
「俺も……そんなこと、ずっと引きずってて悪かった」
「そんな……」
「母さんだけが悪いわけじゃないよ」
昔のことを全部なかったことにはできない。
離れていた時間だって、消えるわけじゃない。
それでも。
俺は、母さんを見つめた。
「これから俺、母さんと少しずつでもいいから、離れてた時間を取り戻せたらいいと思ってる」
言葉にした瞬間。
母さんの目から、涙がこぼれた。
「湊……」
そして、少し震えた声で。
「ありがとう」
そう言って、涙を拭う。

