俺は店の中に入り、空いている席に座る。
スマホを眺めながら、母さんを待った。
「……緊張するな」
何度も画面を開いては閉じる。
そして。
約束の時間が近づいた頃。
「湊、お待たせ」
その声に顔を上げる。
「……母さん」
そこにいた母さんは、昔と変わらない姿だった。
少しだけ笑って、俺の向かいの席に座る。
「ありがとね。会ってくれて」
「こちらこそ」
それだけ言って、会話が途切れた。
何を話せばいいのか分からない。
店内には、周りの人たちの話し声やカップの音が響いている。
それなのに、俺たちの間だけが静かだった。

