「さっき、また縁側の洗濯物踏んで、盛大にすっ転びそうになってたでしょ。俺、遠くから見てたんだよね。ほんと、危なっかしいなぁと思って」
「みっ、見てたんですか……!?あ、あれは、ただ洗濯物を干そうとしただけで……!」
自分の失態に対して恥ずかしがっているのか。
それとも、そんな現場を目撃してしまった俺に対して怒っているのか。
小動物みたいに顔を真っ赤にして、一生懸命に言い訳を始める彼女。
その必死な様子が面白くて、俺はつい
「ふふ、ごめんごめん」
と、いつものように意地悪く笑ってしまう。
あの日から、俺の日常で唯一変わったこと。
───それは、気がつけば俺の隣に、こうして一生懸命に言葉を返してくれる存在ができたことだった。
別に、彼女に対して恋心が湧いているわけでもない。
……かと言って、これから恋をする姿なんて想像もつかないけれど。
でも、翡翠のことしか見えていなかった俺の視界に、今はこうして、赤くなったり怒ったりと忙しい女の子が、当たり前のように映っている。
……それが、どうしようもなくうれしくて。
俺はいまだに頬をふくらまして怒っている彼女の頭に、そっと自分の手を重ねた───……


