三谷詩織、二十七歳。
大手食品メーカーである、ゆきしろフーズ株式会社に務めて五年目になる中堅社員だ。
現在は商品企画部にて、市場調査をおこない今どんな食品が流行っているかを調べたり、新商品を企画したり、開発部と打ち合わせをしたり……“どんな商品なら売れるか”を日々考えている。
「あ、三谷さん! お疲れ様です」
「神林くん。お疲れ様」
「例のチョコレート菓子の企画、進んでますか?」
「うん、順調だよ。後で最終調整をしてから、新しい企画書と一緒に市場調査の資料も送らせてもらうね」
「はい、了解です」
笑顔が爽やかな彼は、神林良平くん。
一つ年下の彼は後輩であり、商品開発部に配属されている。
サラサラの黒髪に、すっと通った鼻筋。切れ長のブラウンの瞳はビー玉のように透き通って見える。背丈も180センチ近くはあって、すらりとしたモデル体型だ。
そんな超がつくほどのイケメンで仕事もできる彼は、当然ながら、女性社員から絶大な人気を誇っている。
「では、メール待ってますね」
「うん」
「あ、それと――今日、ウチに泊まっていくでしょ? 一緒に帰ろうね、詩織ちゃん」
予期せずに耳元で囁かれた声は、数秒前より少し低くて、とびきり甘い。
ぱっと耳元を抑えてジト目を向ければ、神林くん――ううん、良平くんは、悪戯が成功した子どもみたいな顔をして目を細めた。



