* * *
控室に戻り、結陽の手はパッと手を離れた。椅子を引いて振り返った結陽と瑞樹の目が合った。
「……随分、その、盛り上がったというか運動量が多いステージでしたか?一応モニターで確認してはいましたが何かありました?」
「え、なんで?」
「汗もすごいですし、顔が赤いですよ。珍しいですね。」
少しだけ微笑んだ後、大きめのビニールバックから4人分のタオルが取り出され、テーブルに置かれる。そしてそのうちの一つがまっすぐに差し出された。それを受け取って、顔を隠したくて無造作に拭いた。どかっと椅子に腰かけて、頭にタオルを被ってそのまま突っ伏した。
(……顔赤いとか、そんなんバレるじゃん。)
ばれてしまいたいような、ばれてはいけないような狭間にいる。22歳の時に出会って、5年が経つ。日に日に気持ちは、色を変えて増すばかりだった。
「あ、お疲れ様です。木野さん。」
「お疲れ様でした。タオルです。飲み物も用意してありますので少し休憩してください。」
「ありがとうございますー」
「ってか瑞樹、終わってから一人で勝手に行動すんなし。」
「瑞樹?」
メンバーの声が頭上から降ってくる。うっすらと「ごめん」と返して、タオルを被ったまま動けないでいた。
(……今日の感想、聞きたかったかも。)
できれば二人きりで、そんなことを思うが当たり前にそんなチャンスはなかなか訪れない。マネージャーとアイドルなんてそんなものだ。それは常識的に理解している。ただ、感情がずっと理解を追い越そうとしている、そんな気がする。
メンバーの会話に混ざる気にはなれず、なんとなくそのまま会話を流し聞くことにした。
「この後は社長が焼き肉に連れていってくれるとのことです。時間にゆとりはありますので急ぎではありません。」
「あ、じゃあちょっと挨拶しに行ってきてもいいですか?SNS用の写真撮りたい人もいるし。」
「俺もー。」
「あ、みんな行く感じ?じゃあついてく~瑞樹は?」
「パス。」
「なんか疲れてんなーじゃあ休んでおけよ?」
確かに疲れてもいたし、喉の調子も悪いとは言わないがぼんやりとした違和感もあった。誰かに気付かれるほどの何かではないけれど。ステージで歌う時間は楽しくて、そのエネルギーが違和感を忘れさせる。そんな調子で最後まで今日も走り抜けてしまった。
パタンとドアが閉まって、再び静寂が訪れる。すると、瑞樹の方にヒールのカツカツという音が少しずつ近付いてきた。
控室に戻り、結陽の手はパッと手を離れた。椅子を引いて振り返った結陽と瑞樹の目が合った。
「……随分、その、盛り上がったというか運動量が多いステージでしたか?一応モニターで確認してはいましたが何かありました?」
「え、なんで?」
「汗もすごいですし、顔が赤いですよ。珍しいですね。」
少しだけ微笑んだ後、大きめのビニールバックから4人分のタオルが取り出され、テーブルに置かれる。そしてそのうちの一つがまっすぐに差し出された。それを受け取って、顔を隠したくて無造作に拭いた。どかっと椅子に腰かけて、頭にタオルを被ってそのまま突っ伏した。
(……顔赤いとか、そんなんバレるじゃん。)
ばれてしまいたいような、ばれてはいけないような狭間にいる。22歳の時に出会って、5年が経つ。日に日に気持ちは、色を変えて増すばかりだった。
「あ、お疲れ様です。木野さん。」
「お疲れ様でした。タオルです。飲み物も用意してありますので少し休憩してください。」
「ありがとうございますー」
「ってか瑞樹、終わってから一人で勝手に行動すんなし。」
「瑞樹?」
メンバーの声が頭上から降ってくる。うっすらと「ごめん」と返して、タオルを被ったまま動けないでいた。
(……今日の感想、聞きたかったかも。)
できれば二人きりで、そんなことを思うが当たり前にそんなチャンスはなかなか訪れない。マネージャーとアイドルなんてそんなものだ。それは常識的に理解している。ただ、感情がずっと理解を追い越そうとしている、そんな気がする。
メンバーの会話に混ざる気にはなれず、なんとなくそのまま会話を流し聞くことにした。
「この後は社長が焼き肉に連れていってくれるとのことです。時間にゆとりはありますので急ぎではありません。」
「あ、じゃあちょっと挨拶しに行ってきてもいいですか?SNS用の写真撮りたい人もいるし。」
「俺もー。」
「あ、みんな行く感じ?じゃあついてく~瑞樹は?」
「パス。」
「なんか疲れてんなーじゃあ休んでおけよ?」
確かに疲れてもいたし、喉の調子も悪いとは言わないがぼんやりとした違和感もあった。誰かに気付かれるほどの何かではないけれど。ステージで歌う時間は楽しくて、そのエネルギーが違和感を忘れさせる。そんな調子で最後まで今日も走り抜けてしまった。
パタンとドアが閉まって、再び静寂が訪れる。すると、瑞樹の方にヒールのカツカツという音が少しずつ近付いてきた。



