恋の練習のはずが、若手社長の溺愛に蕩かされています~声フェチ女子は断れない~

 頭の中で反芻したが、すぐに理解した。カッと顔が熱くなる。

「い、いやいや、無理です! 風早社長のお声を浴びてたら、平常心でいられないんですって!」

 焦って断った。落ち着いて受け入れられるわけがない。

 とはいえ本当ならば、練習台にされることのほうに、怒ったり困ったりするだろう。

 声のほうが重要な理由なのは、少々変わっている。

 だがやはり自分の心臓が止まる心配のほうが重要だ。

「それなら一ヵ月でもいい。医務室に運んだお礼だと思って……どうだろう?」

 なのに風早は少々ずるいことを述べた。

 恩があるのは確かだ。それなら断れるわけがない。

「……わかりました。一ヵ月だけですよ」

 悩んだものの、郁は受け入れた。

 それに自分にとってもメリットはある。

(幸せな夢を見られる期間だと思っておこう……)

 今まで手が届くわけもなかった声を堪能できるなんて、夢のようだ。