恋の練習のはずが、若手社長の溺愛に蕩かされています~声フェチ女子は断れない~

 だってこんなふうにからかわれたのだ。

 また同じように要求されるのかもしれない。

「さぁ、それはどうだろう?」

 だが郁の警戒は悪戯っぽい視線でかわされた。

 そして続けて言われたことに、郁の心臓は違う意味で跳ね上がる。

「さっきの汐見さんの反応が新鮮で……少しドキドキした」

 風早ときたら、少し目を細めて慈しむような表情と声音でそんなふうに言う。

「……えっ」

 郁は目を見開いた。変な声が一言だけ出る。

「俺は今まで、恋愛が長続きしたことがないんだ。だけど汐見さんのこの反応なら『恋愛』にも自信が持てる気がする」

 風早が穏やかな声音で続けた。

 郁は内容に戸惑うよりも、初めて聴く声音を魅力的に思っていたが、きっと呑気だった。

 風早がとんでもない要求を、ズバッと発言する。

「恋人にするようなことの練習を、俺にさせてくれないだろうか?」

 郁の頭の中は一瞬、無になった。

(練習? 恋人にするようなことって……)