恋の練習のはずが、若手社長の溺愛に蕩かされています~声フェチ女子は断れない~

 郁の反応を確認して納得した風早が微笑する。

 郁の心拍数をさらに速めたのは、表情より微笑を含んだ声だったけれど。

「ひ、酷いです!」

 だがからかわれたも同然だ。

 郁は高鳴る心臓と赤い顔を抱えながら、憤慨した。

「私は人の声に少し好みがあるだけですから……」

 拗ねた声で、なんとか説明する。

「ふふっ、汐見さんは真面目な印象があったけど、意外とギャップがあってかわいいんだな」

 なのに返されたのは刺激的な言葉だった。

 イケボによる『かわいい』に郁の心臓はまた跳ね上がったし、風早のほうはくすくすと笑い声まで洩らして、面白そうにする。

 郁は笑われてさらに憤慨するやら、初めて聴く笑い声にまた煽られるやらだった。

「そうだ、汐見さんが俺の声を好きなら頼みたいことがあるな」

 一通り笑ったが、風早がそのあと口調を変えた。

 郁は安堵しつつも警戒する。

「変なことでは……ないですよね?」

 恐る恐る聞いた。