恋の練習のはずが、若手社長の溺愛に蕩かされています~声フェチ女子は断れない~

「……ほう。失礼だが、少し変わった理由だな」

 白いカーテンで間仕切りをした医務室内。

 パイプ椅子に座る風早は、だいぶ落ち着いた郁から事情を聞いて、戸惑いの表情を浮かべた。

「そうですよね……」

 ベッドで上半身を起こした郁は、うつむくしかない。

 それに今は距離があるから刺激は少ないが、あの声が近いことにもソワソワする。

 風早はこの会社の若手社長でまだ二十九歳だ。

 おまけに見た目も良い。

 サラッとした黒の短髪を綺麗に整えており、切れ長の目元と、スッと通った鼻筋に形の良いくちびるを持つクール系だ。

 実際、彼は取材を受けて、ビジネス誌などに取り上げられることも多い。

 もちろん風早コーポレーションが通信関係の会社として業績を順調に上げているという理由はあるだろう。

 でも『社長がイケメンだから』という事情もあると社内では噂されていた。

 彼が写真映えするから読者の興味をさらに惹けるわけだ。

 そして郁は二年前の入社時から、そんな彼に魅力を覚えていた。

 ただし他の女子社員たちとは違った理由だ。

 自身で『イケボ』と評している彼の声である。